アルゲダス短篇集
■著者:ホセ・マリア・アルゲダス著 杉山晃訳
■書誌事項:彩流社 2003.6 ISBN4-88-202823-9
■感想
日本で翻訳されたアルゲダスの3冊目。ヤワル・フィエスタ、深い川とすべて杉山晃先生の翻訳である。ペドロ・アルモドバル以外は全部読んでいるような気がする…。
ペルーの田舎で成長する白人(ミスティ)の少年の物語が短篇で綴られている。インディオに対して心情的なシンパシーをもち、同じ白人でも横暴な支配者を憎むが、いざ大自然の驚異を前にすると、自分はインディオの子ではないのだから危害を加えないで欲しいと祈る、そんな中途半端なアイデンティティの苦しみがすべての作品のあちこちからほとばしり出るようだ。
インディオの用語なので、訳せない単語が多く、言葉に慣れないとちょっと読み進めるのが厳しいだろうが、インディオのもの悲しさと祭り(フィエスタ)に象徴される力強さ、一歩間違えると凶暴さや残忍さにつながるのだが)が好きだ。
後にヤワル・フィエスタとなる作品の原型も含まれている。