生半可な學者
■著者:柴田元幸
■書誌事項:白水Uブックス 1996.3.25 ISBN4-560-07333-3
■感想
これはまた中途半端に古いエッセイ。軽いものが読みたい昨今なのではあるが、タレントのエッセイなんかだと1時間以内で読み切ってしまい、内容も面白くなく、読後まったく記憶に残らないので、非常にコストパフォーマンスが悪い(BOOK OFFで100円であっても)。学者のエッセイの方が多少はためになるし、内容も面白いものもある。
柴田氏は英米文学の学者/翻訳家のスターであるからして、そうつまらない筈もなく、エッセイも多数出ている。その原点ともいうべき本なのだが、これで講談社エッセイ賞受賞か…という気も若干するし、それくらい面白いエッセイがないという証拠かもしれない。私は英米文学はあまり読まないが、ポール・オースター好きなので、よくお世話になっている。
欲を言えば、面白い本を探しているときにこういう作家や翻訳家の新書を読むので、書評がもうちょっとあると嬉しかったが、英語表現のエッセイなのでそれは仕方がない。自訳になるが「舞踏会へ向かう三人の農夫」はちょっと読みたいかも。アウグスト・ザンダーの話とかはよくナチ物でみかけたなぁ。
それと、アメリカは大学に創作科というところがあって、そこから作家が生み出されてくることに対して、ちゃんと疑問符を打ち出しているところに共感。「システム化された体制によって生産される作家たちは、面白い小説を書くのか?」と。それでも中にはごく稀にちゃんと書く人もいるけど、稀です。