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2002年12月

2002年12月 4日

もっと広く―南北両アメリカ大陸縦断記 南米篇

南北両アメリカ大陸縦断記南米篇 上南北両アメリカ大陸縦断記南米篇 下■著者:開高健
■書誌事項:文藝春秋 1983.12(文春文庫)ISBN4-167-12709-1,ISBN4-167-12710-5
■感想
1979年〜1980年にかけ、アラスカから南下して南米大陸の端、フエゴ島まで釣りをして歩く旅行記。これは南米篇で、メキシコ以降の話である。
かなり古いものだし、釣りに興味はないし、「週刊朝日」連載だし、開高健だし……オヤジ向けの気は満載。が、予想以上に面白かった。食事や人、風景、社会全般と一流のルポルタージュをものにした人が書くものは、やっぱり違う。というか、普段翻訳ものの小説やノンフィクションばかり読んでいるので、所詮翻訳者の日本語なのだなぁと思った。ちゃんとした日本語の使える日本人の作家の手になるものは、漢字の使い方、言葉遣い、筆致全般がさすがに面白い。日本人が書けば良いってものではないけどね。
食事などはかなり詳しくなってきたので、それなりに。一番面白かったのは、チリあたりの話。アジェンデ政権が崩壊してピノチェト政権になって7年、という時点だったため、記憶に新しい普通の人たちの声が非常に目新しいものに写った。とにかく、アジェンデ政権は物がなかった。今は物があるから、こっちの方が良い、という声が圧倒的。亡命者文学ばかり読んでいると、まったく見えないものだな、と。今度ちゃんとその辺のルポを探してみよう。
聞けば、労働者の時代!とばかりにストばっかりやって生産性がメチャメチャ落ち、政府は話し合いばっかりで全然事態を改善する方向へ進まない。南米の社会主義だなぁとつくづく。どうしても勤勉とは言い難いし、自分の利益が優先だからね。チリ人やアルゼンチン人はその中でも比較的マシだとは言われてるけど。
元々は自然紀行なので、その点はそれなりに楽しく読めるのだが、ジャングルものは決して好きなわけじゃないんです。虫がいっぱい出てくるので、とても自分が行けるとは思えないし。
やっぱり「人」の話が最も興味をひく。というか、筆者の人間描写がうまいのか…。
初めてアマゾンのマーケットプレイスを利用する。上下巻とかセットものは明らかに損します。わかってて、でも試してみたくてつい買ってしまいました。