東京画
■TOKYO-GA 1989.6 93分 西独/米
■スタッフ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
製作:クリス・ジーヴァニッヒ Chris Sievernich
撮影:エド・ラッハマン Ed Lachman
音楽:ローリー・ペッチガンド/ミーシュ・マルセー/チコ・ロイ・オルテガ
出演:厚田雄春/笠智衆/ヴェルナー・ヘルツォーク Werner Herzog
■感想
これは初見だ。あまり深い意味はなく、なんとなく見てなかった。「パリ、テキサス」のクランクイン前に撮影し、公開後に編集したドキュメンタリー作品。小津安二郎監督をこよなく尊敬するヴェンダースが小津やそのスタッフと作品に捧げたオマージュ。
ヴェンダースは基本的に非常に素直で謙虚なアーティストだ。多くの映画を見て、たくさんの映画監督を尊敬している。その中でも小津はNo.1なのだが、言ってみるとちょっとミーハーなところがある。それがいいんだけど。
冒頭と最後に小津の「東京物語」の作品がそのまま使用されている。まずはヴェンダースが撮影監督と二人で東京を見てまわる。撮影されたのが1983年当時のため、タケノコ族とかロカビリー族とか、原宿あたりのすでに懐かしい風景が、昭和30年代の更に懐かしい風景と対比的に撮影されている。パチンコ屋や後楽園の巨大なゴルフ練習場をわざわざ選んでいる。「夢の涯てまでも」のときはカプセルホテルだし。あと、外人のお約束で合羽橋の食品見本製造工場を訪ねている。うーむ。浅いなぁ。東京の風景って、そんなんか?当時だって一部の人しか見ないと思うんだが、そんなの。
夜のゴールデン街はきっとあまり変わらないんだろうな。新宿御苑の花見はきれいだと思って撮っているんだろうけど、花見をしている日本人がバカみたいな気もして、ちょっと迷う。
北鎌倉の小津のお墓は有名で墓碑銘はなく「無」とだけ刻まれている。お参りする笠智衆も故人だ。そう言えば亡くなったときは、とにかくショックで絶句したな、と思い出す。この作品を観て、あらためて、小津監督と笠智衆は雰囲気が似ているなと思う。よく言われることだが、二人は年齢的に一つしか違わない。笠智衆が「すべて先生の指示に従って、自分の演技などしなかった」と語っているが、まさに彼は小津の分身だったのだな、と
撮影監督の厚田雄春のロングインタビューも良い締めくくりだった。ただ、ヴェンダースの語りはいつもは好きなのだが、今回に限っては邪魔だ。翻訳しなくても、わかるんだから、ちょっと黙ってて欲しい、というのは無理な話で、フランス向けに作られているのだから、仕方がない。
私にとって小津作品は正直退屈だ。あのリアリスティックな「間」と目線と同じ、低いアングルがいいんだっていうことは理解できるんだが、受け入れるのが難しい。日本人である私がヴェンダースの「間」は受け入れられても、小津の「間」がダメというのは同じアメリカ文化で育っているのに、世代の違いかなぁと不思議な気がした。