龍時01-02
■著者:野沢尚
■書誌事項:文藝春秋社 2002.4.1 1,333円 ISBN4-163-20870-4
■感想
珍しく日本の小説を読む。Numberで連載されていたサッカー小説である。Numberは特集がサッカーの時以外は読まないため、とびとびでしか読んでいないので、単行本になっていたので読んでみた。読んでみて、途中で連載は終わっていたと思う。後から書き下ろしが加わっている。
主人公は高校1年のサッカー選手。日本のユース代表に選ばれ、結果を出したものの、監督の指示に反したため、その後再び代表に呼ばれることはないだろうと考えた主人公が、たまたまその試合を見に来ていたリーガエスパニョーラのオーナーの誘いに即のってスペインに飛ぶ。いわゆる2部リーグの下の更に下からスタートし、2部、リーガへと上って行く姿を描いている。
連載時から思ったが、サッカーのプレイの描写が非常にしっかりしている。元ジェフの中西が監修したそうだ。テクニック面ばかりではなく、選手のメンタルな面、試合前、こんなケースに追い込まれたら、という場面での精神的な部分での書き込みが細やだ。こんなプレイヤーがいたら、面白そうだなとも思う。
ただ、自分の人生はサッカー以外にあり得ないと思い込むように追い込まれる、そんなハングリーになれるだけの環境に、ある意味恵まれた少年はなかなか日本ではいないだろうなと思う。それがわかるだけに、少々寂しい。こういうプレイヤーが生まれる土壌のない国は、いったいどうしたらいいんだろうな。