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2002年3月21日

リスボン物語

■Lisbon Story, 1995 ドイツ/ポルトガル
■スタッフ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
製作:ウルリッヒ・フェルスベルク Ulrich Felsberg/パウロ・ブランコ Paolo Branco
撮影:リサ・リンズラー Lisa Rinzler
音楽:マドレデウス/ユルゲン・クニーパー Jurgen Knieper
出演:リュディガー・フォグラー Rudiger Vogler/パトリック・ボーショー Patrick Bauchau/テレーザ・サルゲイロ/ペドロ・アイレス・マジャルハス/ロドリゴ・レアオ/ホセ・ピショット/ガブリエル・ゴメス/フランシスコ・リベイロ/マノエル・デ・オリヴェイラ Manoel de Oliveira
■感想
こんな映画があることを最近まで知らなかった。「夢の涯てまでも」(1991)以降、如何に自分が興味を失っていたかがよくわかる。「時の翼にのって」(1993)もカンヌ国際映画祭でブーイングくらったことを聞いて、まぁ、そうなんだろうな、と思った記憶しかない。
しかし、見ておけばよかった、と思った。全作品はまだ見てないが、これは90年代の作品の中でもっとも良いのではないか?これで5度目のフィリップ・ウィンター役のリュディガー・フォーグラー、「ことの次第」で死んだ筈の映画監督フレデリック・モンロー役にパトリック・ボーショーと昔の仲間と楽しそうに映画を撮っているのがよくわかる。当初はリスボン市の依頼により、リスボンのドキュメンタリー映画を撮るつもりが、リスボンでドキュメンタリー映画を撮る人の話にしてしまったヴェンダース。映画100年を記念したお祝いの映画らしく、明るく、コメディタッチの作品に仕上がっている。長年暖めていた大作を撮って、それが不評だった。そこで肩の力を抜いて原点に帰り、映画を撮ることを楽しむ、その思いが画面にあふれているようなロード・ムービーだ。
出だしから非常に快調にとばす。欧州統合で国境のなくなったヨーロッパ。フランクフルトからリスボンまですっ飛ばす車内からの画像に気分をよくさせられる。ポルトガルまであと一息のところでパンクしてしまい、やむを得ずタイヤ交換をするが、橋の上に新品のタイヤをおく。この時点で予想がつく。パンクしたタイヤからささった釘を抜き、川に捨てようとして、新品のタイヤをつい落としてしまい、呆然とするウィンター。
録音技師が映画監督の元に走る。それだけで、また「映画についての映画」だなとわかる。やっとの思いでリスボンの映画監督の元にたどり着いたのに、本人が失踪。録音技師なので、音を作るための様々な小道具をもって来ている。馬の蹄の音やフライパンで卵を焼く音などを子供たちに教えるシーンが、個人的には非常に懐かしい。学生の頃教わった作り方、そのままだ。
実際に録音された音も鮮明に町の音をとらえて、素晴らしい出来だ。風景を音で見る、ということができるのは、私は知っている。ゼンハイザーのマイクにソニーのDATも嬉しい。画像を撮影するのは手回しカメラというのがミスマッチで面白い。
ポルトガルのフォルクローレバンド・マドレデウスが登場するリハーサル・シーンはその辺のプロモーションビデオより遙かに格好いい。正直、この女性ボーカルはあまり好みではないが、バックの演奏はとても好みだ。
加えて、ポルトガルの現代詩人フェルナン・ペソアの詩もうまく織り込まれている。結局こういうリリカルな言葉の使い方、音の使い方。音楽、映像もすべてリリカルだ。それがヴェンダースなんだと思う。
DVDになっていないため、LDを探したが、当然絶版。ラッキーなことにネットで見つけて最後の1枚(新品)を買うことができた。