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2002年2月 3日

ミスター・ヴァーティゴ/ポール・オースター

ミスター・ヴァーティゴ俺はけだもの同然、人間の形をしたゼロだった。師匠に拾われ、誰一人なしえなかったことをやってのけた。各地を巡業し、人々を魅了した...。20年代を背景に"空飛ぶ少年"の飛翔と落下の半生を描く、ポール・オースターのアメリカン・ファンタジー。



ファンタジックな部分も持ち合わせていたオースターだが、この作品は過去のオースター作品の中で最もファンタジックである。「空中浮遊」を過去からあった「芸」とし、この芸の修行にいそしむ姿は、ちょっと異常な肉体改造な点を除けば、サーカスの芸と同じように詳細に、まるで本当に出来るかのように描かれている。

主人公の運命は落ちたり、上がったり、また落ちたり、上がったりの繰り返し。空中浮遊の後の人生も時代背景を反映してしっかりと書き込まれてはいるが、どことなくファンタジック。

かつてファンだったが、落ち目となったメジャーリーガーに過去の自分を見て、引導を渡そうと銃を向ける、というジョン・レノン暗殺事件のようなエピソードが入っているのが、少し違和感があるが...。

■著者:ポール・オースター著,柴田元幸訳
■書誌事項:新潮社 2001.12.1 ISBN4-10-521707-0