ニックス・ムービー―水上の稲妻
■Nick's Movie : Lightning Over Water, 1980 西独
■スタッフ
監督:ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
撮影:エド・ラッハマン Ed Lachman, トム・ファレル Tom Farrell (Video)
音楽:ロニー・ブレイクリー Ronee Blakley
出演:ニコラス・レイ Nickolas Ray,ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders,トム・ファレル Tom Farrell,スーザン・レイ Susan Ray
■感想
「理由なき反抗」「大砂塵」などで知られるニコラス・レイ監督をヴェンダースが訪ねて来る。ガンに侵されたニックの病状が予想以上に重いため、共同で映画を作ることを諦め、かわりに死期の近いニックの姿を追うドキュメンタリーを撮影することになる。
これはノンフィクションなのか、フィクションなのか、ドキュメンタリーなのか。家庭用ビデオの画面と、普通の映画らしいアングルでの35ミリフィルムと思われる画面とが交錯して、よくわからなくなってくる。演技指導したり、ミステイクもそのまま流しているし、かと思うと明らかに画面としては失敗しているが音声のためだけに残したかのような画像も入り込んでいる。
そういう混乱がまさにこの映画らしいところで、現実的に死を追っているさなか、フィクションがノンフィクションを浸食していく様をそのまま描き出している映画なのだろう。
「アメリカの友人」で海外からも一定の評価を得るようになり、コッポラに呼ばれてアメリカに向かったヴェンダース。映画「ハメット」脚本作成中からコッポラともめ、そのもめてる最中に撮られた映画。「ハメット」がものすごく「作り物」の世界なものだから、欲求不満が爆発したかのよう。
ニコラス・レイは「アメリカの友人」のギャング役がカッコよかった。しかし、もう当時から病魔に冒されていたのかもしれない。この映画では抗ガン剤で髪が抜け落ちて悲惨な姿だが、それは実は家庭用ビデオだけで、映画の画面になると、とたんにしぶい。パジャマやシャツなどに必ず「赤」が入る。今回の撮影はロビン・ミュラーじゃないのに、まるでミュラーの「赤」のようだ。
ヴェンダースと1978年に結婚し、1981年に離婚したロニー・ブレイクリーが主題歌を歌い、出演している。この前作の「アメリカの友人」ではリサ・クロイツァーが出演していたが、この当時はたしか結婚してたと思う。ロニー・ブレイクリーはこの映画のためだけの結婚かのように見える。
しかし、なんだこのAmazon.co.jpの「ビム・ベンダース」ってのは。見つけられないぞ、これじゃ。