春の祭典
■著者:アレッホ・カルペンティエル著,柳原孝敦訳
■書誌事項:国書刊行会 2001.5.1 ISBN4-336-04025-7
■感想:
これは偉大なる政治小説である…というふれこみ、この膨大なページ量にめげず、カルペンティエルの作品である、しかも新刊、というだけで買ってしまった。
政治活動によってキューバを追い出されたブルジョアの青年がヨーロッパで出会う、ロシア革命、スペイン内戦、そして故国キューバ革命などの壮大な歴史絵巻…なんだけど、この中の歴史にロマンがないので引っ張るのがつらい。全部に全部自分の博学っぷりを披露しているんだけど、それが鼻につく人の方が多いんじゃないか?という気がする。
大統領選に出馬したバルガス・リョサやカストロを讃えるガルシア=マルケスをはじめ、ラテンアメリカと政治は切り離せない。この人も例外ではないが、今一つ距離を置いてるのはこの本を読めば理解可能。というよりは、前述の二人もそうだが、この人もやはり「政治オンチ」と言わざるを得ない。晩年もカストロ政権下のキューバにとどまるが、傑作は生み出せなかったのもなんとなくわかる気がする。だって現実の政治とはかけはなれたところにいるんだもの。
国書刊行会の「文学の冒険」シリーズは好きなものが多いのだが、他に先に出した方がいいんじゃないかな、というラインナップがまだまだ残ってます。第一期に入ってるくせに未刊の「フリアとシナリオライター」とか。
よっぽどもの好きな人にオススメします。