最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2001年4月

2001年4月20日

セルバンテスまたは読みの批判

■原題:Cervantes o la critica de la lectura, Carlos Fuentes
■著者:カルロス・フエンテス著,牛島信明訳
■書誌事項:水声社 1982.9.1 ISBN4-89-176262-4(叢書アンデスの風)
■感想:
フェンテスの評論。セルバンテスを小説の変革者と位置づけ、現代文学、とりわけジョイスとの関連で論じている作品。
こういうのが手に入るから、町田の高原はたまには足を運ばないと、と思ってしまう。ちなみにこれを購入した日は移転直前のセール中だった。駅からまた遠くなったなー。

2001年4月12日

めくるめく世界/レイナルド・アレナス

■原題:El Mundo Alucinante, 1969, Reinaldo Arenas
■著者:レイナルド・アレナス著,鼓直,杉山晃訳
■書誌事項:国書刊行会 1989.4.25 ISBN4-336-02466-9 (文学の冒険)
■感想
日本で翻訳されているものでは、アレナスのもっとも早い時期の作品。メキシコの実在した異端の僧セルバンド・デ・ミエルの波乱に満ちた生涯を描いたピカレスク風の伝記のような小説。メキシコの独立を目指して投獄と脱獄を繰り返し、ヨーロッパを駆けめぐり、ついにはメキシコに舞い戻る。この獄中の話なんか、実際に作者が体験してから、書いたのかと思うと、話は完全に逆転していて、追体験することになる。ひどい話は書くもんじゃないね。
しかし、これだけでこの作品「魔術的リアリズム」とか言われちゃうのは無茶苦茶な気がするな。事実、事実への仮説、事実への願望の三テクストが入り組んでいるが故に、同一の話が事実と幻想とで並列されて書かれている。その文体の極端な違いで一目瞭然に書かれているため、混乱することは少ない。
いつも思うけど、幻想文学の信望者ってのは、幻想的な記述があれば、もう幻想文学のカテゴリに入れちゃうから。しょうがないんだけど、こういうのと、例えばラブクラフトなんかが同じ範疇で語られているかと思うと、気持ち悪いと思う。

2001年4月10日

ハバナへの旅

■原題:Viaje a La Habana, 1990, Reinaldo Arenas
■著者:レイナルド・アレナス著,安藤哲行訳
■書誌事項:現代企画室 2001.3. ISBN4-7738-0100-X 2,200円
■感想
レイナルド・アレナスはキューバの作家。カストロ政権下で逮捕・投獄、原稿没収などさんざん悲惨な目に遭って、亡命したにもかかわらず、NYもまたいごこちの良い場所ではなかった。「革命」がすべてのキューバから逃げても「金」がすべてのアメリカに幻滅する。
「ハバナへの旅」では妻子を捨て亡命し、二度と帰るまいと思いながらも全財産をもって一時帰国した男が主人公になっている。変わり果てたハバナに、それでも男は帰って行く。亡命文学の悲哀は故国に住むものにはよくわからないが、哀感迫る短編集である。