ペドロ・パラモ
■原題:Pedro Paramo, 1955
■著者:フアン・ルルフォ著,杉山晃,増田義郎訳
■書誌事項:岩波書店 1992.10.16 ISBN4-00-327911-5(岩波文庫)
■感想
母親を亡くしたフアン・プレシアドは、いまわの際の母の勧めに従い、父親であるペドロ・パラモを探しにコマラへ行く。コマラに着くと、そこは荒涼とした大地の広がる、人気のない廃れた町だった。ペドロ・パラモはすでに死んでおり、町には多くの幽霊が生者とともに語らっていた。
フアン・プレシアドも実際はすでに死んでおり、土の中で一緒に埋められたドロテア婆さんに語る物語と、残酷な大地主にのし上がったペドロ・パラモとその妻スサナの物語。全体で70ほどの断片で構成された中編小説だが、時間は交錯し、生者の世界と死者の世界を行きつもどりつし、その切れ目はよくわからない。一度読んだだけではなかなか理解できないが、平易な訳文なので、その点は助かる。
これは解釈が非常に多く出ているようだ。削り落とされた文体なので決して長くはないが、確かに父親殺し、父親を捜す旅、近親相姦など、神話的要素が多く盛り込まれた、解釈しがいのある読み物だと思う。
(ふるほん文庫やさんで定価460円のものがプレミアがついて1280円もした)