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戯曲

わが魂は輝く水なり

初出:『群像』1980年2月号
収録:「わが魂は輝く水なり―源平北越流誌」p5~93 講談社 1980.2
「清水邦夫全仕事1958~1980下」p319~369 河出書房新社 1992.6.20

受賞:泉鏡花賞(第8回・1980年度)/テアトロ演劇賞(第8回・1980年度)

【上演データ】
1980(昭55)年2月16日~17日,3月2日~9日
劇団民藝公演
会場:砂防会館ホール
/2月19日金沢市観光会館/2月20日鯖江市文化センター/2月21日福井市文化会館/2月23日~25日名古屋・名鉄ホール
演出:宇野重吉
装置:内田喜三男
照明:秤屋和久
音楽:間宮芳生
効果:山下泰敬
出演:宇野重吉/大森義夫/奈良岡朋子/梅野泰靖/内藤安彦/山本勝/新田昌玄/鈴木智/伊藤孝雄/小沢弘治/塩屋洋子/真野響子/桝谷一政/綿引洪/助川次雄/他
【あらすじ】
時は源平合戦の時代、平維盛と木曽義仲軍が激突した倶利伽羅合戦の直後。斎藤実盛はかつて、わずか二歳の源次郎義仲の命を助け、ひそかに木曽山中の中原一族に預けたが、今は敵味方となって戦っている。倶利伽羅合戦は一万の義仲軍が十万の維盛軍を夜襲で蹴散らし、わずか五千が生き残ったという、義仲が圧勝した戦いであった。しかし屍体が累々と積み重ねられた倶利伽羅の谷をのぞき込む義仲軍の兵士の眼は一様に暗かった。
斎藤実盛の息子五郎は幼い頃から義仲や巴御前と親しんできたため、敵対する平家の一門であるにもかかわらず、八年前に義仲軍に身を投じた。しかし、不慮の死を遂げ、今は亡霊となって父・実盛につきまとっている。
実盛も倶利伽羅合戦に傷ついたが生き残り、故郷である越前の南井の里、藤原権頭の屋敷に帰って来た。そこに居合わせた五郎の弟・六郎は父の傷ついた姿に義仲軍の強さを見、木曽義仲の元へ走った。しかし六郎が見た義仲軍の実体は…。
【コメント】
民藝に書き下ろした重厚な時代劇です。「幻の…」で保元・平治の乱を描いたのに続き、今度は源平の合戦です。宇野重吉が斎藤実盛なのは当然として、奈良岡朋子が巴御前…?真野響子ならまだわかりますが…?
「楽屋」で取り上げた〈老い〉というものを強く意識した作品だと思います。〈青年〉からいきなり〈老い〉は早いような気もしますが、いきなり、ということでもなさそうです。以後の作品には必ずどこかで〈老い〉を取り上げています。
【再演】
2008(平20)年5月4日~27日
Bunkamura
会場:Bunkamuraシアターコクーン
演出:蜷川幸雄
美術:中越司
照明:大島祐夫
衣裳:小峰リリー
音響:友部秋一
出演:野村萬斎(斎藤実盛)/尾上菊之助(斎藤五郎)/秋山菜津子(巴)/大石継太(中原兼平)/長谷川博己(平維盛)/坂東亀三郎(斎藤六郎)/廣田高志(中原兼光)/邑野みあ(ふぶき)/二反田雅澄(城貞康)/大富士(郎党黒玄坊)/川岡大次郎(郎党時丸)/神保共子(乳母浜風)/津嘉山正種(藤原権頭)
【コメント】
蜷川さんがこうやって時折、自分が過去に取り上げていない清水作品も演出してくれるので、これは見ることはかなわないだろうと思っていた作品をこうして観ることが出来る。もうそれだけで、誠にありがたい。清水作品や井上ひさしの初期作品を扱うのは自分にとって「原点回帰だ」と言う。
実際に目の当たりにしてみると、「赤軍」とか「集団リンチ」とか「革命」とか、そういった色の強い作品だったことがよくわかった。戯曲はやはり読んだだけでは伝わりにくいものがあるんだなとつくづく。五郎の死なんかは本当に集団リンチだなと。集団を統率してくためには生け贄が必要だった。死人である五郎はそのことに納得してしまっているのか、とても静かだ。
パンフレットにあったように、蜷川さんは当時自分たちが倒そうとしていた相手=新劇の代表格の民藝に書くなんて「違うだろう!清水」と思い、避けてきた脚本だとのこと。じゃあ日生劇場で「ロミジュリ」ならいいんか、とか言いたくなりますが、全然この際関係ないのでパス。しかし蜷川さんもあらためて読んでみたらやっぱり大人=新劇の側から見た自分たち=息子たち、というあたりが上手に織り込まれていると思ったのではないだろうか。
野村萬斎は42歳、尾上菊五郎は31歳と、親子を演じるには少々年が近すぎる。というか宇野重吉が66歳というちょうど良い年齢で演じた役を42歳でやるのは、芸達者な萬斎といえども厳しいだろう、と当初予想していた。こちらのイメージにある萬斎の若々しさ(毎朝NHK教育「日本語で遊ぼう」で見ているせいか)が目の前の萬斎とあまり一致しなかったせいでそれほど違和感はなかったが、時々イメージの方の萬斎が勝ってしまうことがあって、そういうときは多少妙な感じもした。
蜷川さんは客寄せパンダみたいな配役はやらないが、将来性の豊かな若者をしごくのが好きらしく、舞台経験の少ない若手スターが登場することが多い。そのせいで、舞台が華やかになるという面もあるが、単純に何言ってるかわからない、というような見苦しい場面が多々ある。そういうことは若手スター(尾上菊五郎)がいても、今回はさすがになかった。
「戦は人間を多少なりともいびつにする」という台詞通り、実盛も含て若者たちが狂気に侵されつつある空気の中で、五郎だけが狂気に陥る前に死んでいるせいか、一人繊細で澄んだ空気をまとわせている。そういう意味では尾上菊五郎は適役だったと思う。萬斎のせいで、決して芝居自体がうまいとは感じなかったが、空気を作るのがうまい。歌舞伎の人はやっぱり上品だな‥。でも六郎役の板東亀三郎も奮闘していたと思う。
(2008.5.17 マチネ)
 


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