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戯曲

花のさかりに死んだあの人

初出:『テアトロ』1985年11月号
収録:「花のさかりに…」p155~204 テアトロ 1986.12.10
「清水邦夫全仕事1981~1991下」p49~77 河出書房新社 1992.11.30

【上演データ】
1986(昭61)年3月
木冬社=ジァンジァン提携公演
会場:渋谷ジァンジァン
演出:清水邦夫
照明:日高勝彦
音響:深川定次
出演:黒木里美/伊藤珠美/林香子/玉城美〓/白内智香子/鈴木杏子/南谷朝子/石塚智二/他
【あらすじ】
 心臓発作で死んだ父親の金庫から遺書が出てきた。平凡な本屋の主人だと思っていた息子たちはその内容に驚く。父親には二十五歳の愛人がいて、6回分割払いで遺産を与えるように書いてあったのだ。その女は川向こうの団地に住んでいるらしく、兄弟たちは気は進まないが、小切手をもって訪ねて行くことにする。
 途中で女性が苦手という兄とはぐれ、仕方なく弟は一人で訪ねて行ったが、女の部屋には女の妹や叔母、近所の人たちが大勢いて、うどんを作っている。父はこの連中たちと知り合いだったらしいのだが…。
【コメント】
 木冬社は同人制の緩いつながりをもつ団体から本格的な劇団となってはいましたが、劇団育ちの若手をメインとした舞台は「楽屋」以外はなかったようです。これはその本格的な劇団活動の開始となった作品ではないでしょうか。
 黒木里美という女優は「弟よ」で1990年度の紀伊国屋演劇賞を受賞した人で、テレビ等でも時折拝見しますが、この頃には主役をはれる女優になっていたのでしょう。他にもこれまでずっと端役だった若手が力をつけてきた、それでこの舞台の上演となったのではないでしょうか?
 木冬社は女優の劇団です。それは女優にとって魅力的な作品を書く劇作家の劇団だったからでしょう。「楽屋」が高校演劇のスタンダードになったのは、作品の良さは当然として、男優不足の高校演劇界において女優しか出てこないというのも理由にあげられると思います。かつて現代人劇場では男ばかりの芝居を書いて来た劇作家からは考えられないほど鮮やかな転身でした。
 この年、作者は50歳になります。これから老境にさしかかり、作家としては更に深みを増そうかという年齢だったと思います。この時におそらく60歳前後かと思われるのに「花のさかりだった」と若い女性たちに言わせ、青年たちを圧倒する力をもつ男性を(登場してはいませんが)描いたことで、その後の活動への意欲や期待を感じさせる小作品でした。
 


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