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戯曲

とりあえず、ボレロ

初出:1983
収録:「タンゴ・冬の終わりに」p5~104 講談社 1984.4.2
「清水邦夫全仕事1981~1991上」p255~316 河出書房新社 1992.11.30

とりあえず、ボレロ チラシ
【上演データ】
1983(昭58)年12月
木冬社第9回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
出演:吉行和子/松本典子/磯部勉/中村美代子/黒木里美/他
再演:1985(昭60)年12月8~15日
木冬社第11回公演
会場:紀伊國屋ホール
演出:清水邦夫
美術:朝倉攝
照明:服部基
音響:深川定次
振付:村田大
舞台監督:堀井俊和
出演:吉行和子(中沢しのぶ)/松本典子(木南ふね)/垂水悟郎(沢田治)/川口啓史(木南哲夫)/中村美代子(豊川豊野)/黒木里美(木南砂子)/伊藤珠美(日高けい)/磯野佐和子(日高るい)/石塚智二(日高よしお)/他
【あらすじ】
 日本海ぞいの町にある古い写真館。ここには弟夫婦と共に暮らす一人の初老の女がいる。元は女優だったらしい。冬のある日、突然一人の女が写真館を訪れる。写真館の女とはかつてライバルで、浮名を流し合った女で、いまなお現役の女優である。二人は二十年ぶりの再会だった。
 しかし現役の女優の方は、老残の男を連れている。かつて二人の女優を三角関係のただ中に放り込んだ男である。一人の女はある日決然と二人の前から姿を消し、残された二人は共に暮らしていたと思われるのだが…
【コメント】
 やっと私が舞台をこの目で見た時代がやって来ました。と言っても再演ですが。もう、とにかくこの舞台、大好きでした。戯曲も何度も読みました。どーしよーもなくキザでいいかげんで、女のこと以外実行力がからきしないダメな男に絡む二人の女の図。普段は憎しみ合っていても、男が何かしでかすと一致協力して敵を撃退する、まるで戦友のような関係が描かれています。
 嫉妬も憎しみも越えて、互いに親しみと愛情さえ感じているかのよう。長い年月を経てなお壊れないこの二人関係っていうのは、いったい何なんでしょうね?女をここまで書き込めるのは、やっぱり年輪というやつですしょうか。
 罵り合ったり怒鳴り合ったりする二人のやりとりの前に、男はどうしても非力な感じが拭えません。しかし、力のある女というのはどうしてもこういう非力なロマンチストに惹かれてしまうものだな、という説得力のある男性像でもあったりします。
 もの哀しくも楽しい舞台でした。強くたくましいけれど、ちょっと間抜けな愛すべき女たちが気に入って、これ以後出来るだけこの人の作品は観たいと思った、とても愛着のある作品です。
 


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