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戯曲

あの日たち―忘却と時間についての叙情的仮説

1966の作品
初出:『テアトロ』1月号
収録:「あの日たち」p3~103 テアトロ 1974.7.1
「清水邦夫全仕事1958~1980上」p155~212 河出書房新社 1992.6.20

【上演データ】
1966(昭41)年7月19日~27日
劇団青俳第17回公演
会場:俳優座劇場
演出:秋浜悟史
装置:朝倉攝
照明:立木定彦
出演:青木義朗/井上博一/植田峻/真山知子/和田愛子/金田大/蟹江敬三/岡田英次/木村功/高津住男/蜷川幸雄/豊田紀雄/織本順吉/斎藤晴彦/原知佐子/市川夏江/正城睦子/南祐輔/藤瑠美子/蔵一彦/松本紘一/三輪律子/犀川ひろみ/住吉正博/他
【あらすじ】
 九州のある炭坑町の郊外にあるメンタル・リハビリテーション・センター。ここには炭坑事故のとき、一酸化炭素中毒で記憶を失ってしまった元坑夫たち約200名が収容されている。記憶を取り戻すための様々な訓練が行われ、患者はそれぞれの過去を教えられ、覚え込まされているが、時々間違えてしまう。2年間治療は続けられたが、記憶は一向に回復しないままである。
 ある日、新しい女性の訓練員がやって来る。何やら過去がありそうな女だが、ここには対照的に過去を失った患者しかいない。その中でも特に会社の名簿に載っておらず未だに身内が名乗り出ないため、名前すらわからない男がいる。
 医者と看護婦・訓練員、患者と面会に訪れるその家族の間で〈過去〉の価値と意味をめぐって様々な会話が織りなされる…
【コメント】
 タイトルは立原道造「夏花の歌」にあるものだそうです。「あの日たち」とは実にロマンチックに名付けた「過去」のことだと思います。
 過去の存在が現在を支えている、尚かつその逆説として現在が過去を支えているのかもしれない、という漠然とした印象を与える作品です。
 虚偽の過去が暴かれて、何が真実なのかわからない状態はまさにパニック。教え込まれた過去が真実かどうかは、彼らには自らの存在意義をかけて戦う価値のあるものでしょう。それにしても過去をもつ人間ともたない人間の対立という構図が、過去を根ほり葉ほり聞くという形で現れているのがおかしいです。
 過去を失ったことを機会として新しい未来を作ろうとする登場人物がいて、ほんの少し希望のもてる結末を迎えています。炭坑事故で記憶を亡くした人間の集団という設定を思いついただけで勝負あり、という感じがしました。面白い作品です。
 


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