FOR LIFE 1984年12月21日 35KD4(CDオリジナル)
FOR LIFE 1990年2月21日 FLCF-29035(再発売)
FOR LIFE 2001年5月30日 FLCF-3855(デジタル・リマスター盤)
FOR LIFE 2009年3月25日 FLCF-5008(SHM-CD)
陽水二度目のミリオンセラー。過去に提供した自作を自分で歌い直したセルフカバーアルバムである。1984年の冬に発表されたが、この頃ソングライターとしての陽水の売れっ子ぶりはすさまじかった。「飾りじゃないのよ、涙は」「恋の予感」がヒットしていて、ヒットチャートの上位を独占していたこともあった。陽水としてはいつか自作を歌い直したいという思いがあり、ヒットに便乗してということではないそうだが、レコード会社の方としては当然そういった思惑があり、これが見事にあたったと言えるだろう。
「恋の予感」「ワインレッドの心」ともに安全地帯の曲なのだが、玉置浩二の方が情念あふれて、哀しげなんである。陽水は「恋の予感」は少しテンポを速めにして軽い恋の予感にしているし、「ワインレッド…」の方はぐっと落ち着いていて癒される。どちらが良いということはなく、個性が出ているなぁと思う。
「飾りじゃないのよ 涙は」は中森明菜の方も好きだったが、アレンジはスピード感あふれていて、こちらの方がカッコいい。陽水はこの後無理をしてライブで頻繁に歌うのだが、私は一度も完璧に歌詞を歌っているのを聞いたことがない。
そして、ウィスキーのコマーシャルに自分自身が出演し、そのバックに「いっそセレナーデ」が流れたのだが、なんというか陽水がかっこよかった。元々この世代の人にしては身長が高く、怪しそうな、それでいて繊細そうな独特の雰囲気をもった人だったが、一番風体に油がのっていた時期かもしれないと思う。それにしても大人の歌だった。まだわからなかったけれど、歳をとるにつけ、味わい深さがわかるようになってきた。
ほか「はーばーらいと」「ダンスはうまく踊れない」などヒット曲ばかりではなく「からたちの花」や「A,B,C,D」なんて地味な曲も入っている。だから単なるヒット曲集であるとか、耳障りの良いBGMのような扱いを受けるのは不当だと思うのだが、人に「陽水ってどれ聞いたらいい?」と聞かれたら、80年代いっぱいまでは「9.5カラット」と答えていた(90年代に入ると「ハンサムボーイ」)。一番取っつき易かったということは確かだろう。
「LION & PELICAN」が1982年の12月、「バレリーナ」が83年の12月、そして「9.5カラット」が84年の12月である。毎年冬になると新しい陽水が聞けた。だから陽水には冬が似合うと今でも思う。私は17~19歳だったのだが、本当に幸せな時代だった。そして、この「9.5カラット」はついにCDとLPの同時発売だったのである。いよいよCDプレイヤー買わないとなぁと思った記憶がある。
作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌 | ||
1 | はーばーらいと | 松本隆 | 井上陽水 | 星勝 | 水谷豊 |
2 | ダンスはうまく踊れない | 井上陽水 | 井上陽水 | 久石譲 | 石川セリ |
3 | trANSIT | 松任谷由実 | 井上陽水 | 星勝 | 小林麻美 |
4 | A,B,C,D, | 井上陽水 | 井上陽水 | 星勝 | 沢田研二 |
5 | 恋の予感 | 井上陽水 | 玉置浩二 | 萩田光雄 | 安全地帯 |
6 | いっそ セレナーデ | 井上陽水 | 井上陽水 | 星勝 | |
7 | 飾りじゃないのよ 涙は | 井上陽水 | 井上陽水 | 久石譲 | 中森明菜 |
8 | からたちの花 | 流れ星犬太郎 | 井上陽水 | 星勝 | 樋口可南子 |
9 | ワインレッドの心 | 井上陽水 | 玉置浩二 | 萩田光雄 | 安全地帯 |