最近読んだ本、見た映画・芝居、聞いたCD

2017年8月 2日

COME ALONG 3/山下達郎

come along 3毎年南の島には行くわりに、久しぶりというか十何年かぶりにプールサイドでゆっくり音楽を聴きながら読書することが出来たのが、この夏一番の成果かもしれない。聞いていたのは「COME ALONG」と「COME ALONG II」だ。

「COME ALONG」カセットテープ(1980年)の時は入手できず聞いていなかった、最初に聞いたのは1984年の「COME ALONG II」と一緒にLPで発売された直後。自分のLPではなく、先輩がLPからカセットテープに落としたものをクルマの中でよく聞いていた。のんきな大学生にはよく合う音楽だった。

山下達郎は最初に「RIDE ON TIME」から入って直後の「FOR YOU」の大ブームで、嫌いではないものの、ちょっと食傷気味だったが正直なところ。でも「COME ALONG」のおかげで、初期の山下達郎に出会えた。洗練されきってないというか、くどくない感じがよかった。ポップな曲に派手なベースライン。「BOMBER」「Solid Slider」とか。私は一番好きな曲はずっと「Let's Dance Baby」。これ以上のドライブミュージックはないと思ってる。「COME ALONG」の頭3曲だ。おそらく私は山下達郎のオリジナル曲は全部聴いてると思うけれど、それでもこの3曲がベスト3。

山下達郎を遡って行って、最終的に私はシュガー・ベイブにたどり着く。そこから大貫妙子と出会い、たー坊への道が始まっていった。

私は「FOR YOU」以降の山下達郎はその前の山下達郎ほどは好きではない。それでもオリジナルアルバムは全部聴いてる。だから「COME ALONG 3」の選曲、よく聴いてる曲ではあるけれど、すごく嬉しいというほどではかった。でもこの小林克也との組み合わせはやっぱり楽しい。買ってしまうわなぁ。



2017年7月30日

ムッシュー・パン/ロベルト・ボラーニョ

ムッシュー・パン/ロベルト・ボラーニョボラーニョ・コレクションというシリーズの中で内容的にも量的にも一番読みやすく、一気読みしてしまった。そのせいか、メモを残すのを忘れていた。

1938年のパリ、第一次大戦で肺をやられて戦傷者の年金で細々暮らしながら催眠療法/メスメリスムを学んだピエール・パンはしゃっくりが止まらない病で瀕死の夫の治療を頼まれる。ところがその前後から怪しいスペイン人の2人の男に尾行され...というフイルム・ノアール的な内容。モンマルトルの倉庫の中で迷って出られなくなるシーンやアラゴ診療所に潜り込むシーンは映像にしたらいいのにとゾクゾクする。

特に気になったのが海底墓地の水槽ジオラマ。水槽ジオラマはいろいろあるけれど、飛行機や列車の事故現場というのはなかなか突飛だ。沈没船の水槽ジオラマならわかるけれど。

ナチスに走った旧友プルームール=ポドゥーとの決別のシーンのカッコ良さの一方でマダム・レノーへの横恋慕という情けない感じもまたいい。映画という素材でテルゼフという人物を登場させたアイディアもおもしろい。

バジェホという名前が出たときに、すぐにセサル・バジェホだなとわかった。この亡命した詩人を貧しい南米人として登場させたのは自分自身も貧しい亡命作家だった若きボラーニョの思いが感じられる。

■原綴:Monsiur Pann, 1999 Robert Bola˜no
■書誌事項:松本健二訳 白水社 2017.1.25 194p ISBN978-4-560-09268-2(ボラーニョ・コレクション)

2017年7月16日

paris match in Billboard Live Tokyo

paris match billboard live tokyo名古屋公演に行かれる方、ネタバレありなので見ないで下さい。

渋谷music duoで行われたミズノさんの誕生日ライブ(4/29)に行けなかったので、なんとしてもこれはと思いつつ、でも行けるかどうかわからなかったので、被害を少なめにと思って初めてカジュアルエリアに座ったビルボードライブ東京。私は正面カウンターが好きなので、横側にあまり行きません。他にも席はありますが、この横のカジュアル席は背もたれないから疲れますね。あまり頻繁に使いたい手ではないのですが、とにかく行くことが出来たのでよかった。それから、今回初めて(上の方だけど)黒沢さんの近い方角に座ることが出来て、それがとても嬉しかった。

「Lady's Jam」が始まったときは度肝を抜かれました。ライブでやったことあるのかな?と思っていたら、やはり初めてでした。この曲、レズビアンの女性が主語になってる歌詞なのですが、当事者的にどうなんだろうというのは気になるところではあります。古澤さんは本当によくこんな歌詞が書けるなぁと呆れるというかすごい。「今回は黒沢さんがいるから女声どうしの掛け合いが出来るからやってみることにしました」とのことですが、黒沢さんよくいるのに?

「Saturday」のあのドラミング。イントロが始まったと思ったらなんか違う曲で、よく聞くとボズ・スキャッグスの「Low Down」でした。知ってるはずなのに今まで気づかなかった。洋介さん、私もリアルタイムで聴いていました。歳が同じなので、音楽的な背景に親近感があります。この曲からインスピレーションがわいてきたとのこと。そして恒例の「Saturday」ですが、今回初めて別アレンジでやってみたそうです。サンバ調の楽しい「Saturday」に。

「ダスト・イン・パリス」で黒沢さんがキーボードに。しっとりした良い曲です。アンコールの「ストロベリーワルツ」はミズノさんと堀くんの二人でしっとりと。

2ndも観たかったーと思いながら帰ります。私は2ndのエンディングまではなかなかいられず、いつも残念です。

日時:2017年7月13日(木)18:00~20:20
会場:Bilboard Live Yokyo


Vocals: ミズノマリ
G, Key: 杉山 洋介
G: 樋口 直彦
Ba: 坂本 竜太
Drums: 濱田 尚哉
Key: 堀 秀彰
Sax: 山本 一
Background Vocals : 黒沢 綾


1. Free (Passion 8)
2. 太陽の接吻 (♭5)
3. Lady's Jam (to the nines)
4. Desert Moon (PM2)
5. Low Down (Boz Scaggs のカバー)
6. Saturday (Type III)
7. ダスト・イン・パリス (11)
8. アルメリアホテル (QUATTRO)
9. Killing you (11)
10. Sand Storm (edition10)
en1. Strawberry Waltz (to the nines)
en2. All I Need (edition10)


2ndはこちら(sea side)
1曲目とアンコールが違うかな?

2017年7月15日

Jill-Decoy association のこと

Jill-Decoy associationJill-Decoy association、略してジルデコ。Ego-Wrappin'の森雅樹がアレンジした「光のこどもたち」で知った。その後も時々目にしていたから気になって、Amazon Prime Musicでアルバムを3枚聞いた。それから全アルバムを聴いた。

このところ2回、ライブに行ってる。
2017.2.25:Motion Blue
2017.5.14:
ジルデコ360° Premium Live in 竹あかり~ voyage tour Final ~

本場で鍛えられたJazzギタリストとドラマー、音がよくて、曲もよくて、ボーカルもまぁまぁ好きな方です。伸びやかで良い声でそんなにキンキンしていない。私には耳障りな女性ボーカルが多すぎる。音がよくても女性ボーカルの声質が気に入らないバンドが多いので貴重。ところが、歌詞がかなり残念。全部の歌詞が、ではないが半分近くちょっと?と思う。
若い女性の思いをそのまま綴った歌詞がまざることが多い。日常を離れたい音楽で一人の女性としての心情を「そのまま」歌われるのは拒絶反応がある。だから歌詞は聴かないようにしている。2度ライブ行って、曲も好きなんだけど、どうにももったいないなぁと思って、書いています。

こういう記事を読んで、更にその思いは強くなった。
特集:JiLL-Decoy association~常に新鮮な音楽を届けるジルデコの秘密(Billboard Japan)

彼女が描く歌詞の世界は、いわゆるジャズにありがちなクールで距離をおいたような感覚は薄く、同世代の女性が共感できる身近な恋愛や友人、家族などがテーマになっていることが多い。加えて、女性特有の情念を込めた内容であることも多く、言葉だけを取り出すとどこかウェットで感情的なところも特徴のひとつだ。

聴衆には若くてオシャレな女性が結構いて、共感するのだろうけど、彼女たちが歳をとるのにつれて、歌詞も歳を取るようになるのだろうか?

同じことを歌うのに、もっと比喩的に、高い表現力を使った歌詞は書けないものなのか。すごくいい曲なのに、どうにももやもやする曲の代表格に「わすれな草」があります。とても叙情的で良い部分と残念な部分が混ざり合っていて、繰り返し聴く気が失せる。
この傾向が5枚目の「ジルデコ5」から加速度的に強くなり、最新盤の「voyage」へ向けてひどくなってるなと思う。「航海」なんていい曲だなと思うのだけど、埋もれてしまっている。

「女性としての心情をそのまま歌った歌詞」。やるなとは言わないけれど、アーティストとして、このままでいいのかと。別にオシャレなジャズシンガーにならなくていいけれど、もうちょっとなんとかならないのかなぁ。吉田美和になりたいのはわかるけど、彼女はもっといい歌詞書いてますけれども?と。

そして、どうしても言いたくなった理由はやはり、paris matchの古澤大氏の歌詞を聴いたから。一時期あそこもミズノさんが歌詞を書くようになってちょっと違和感を覚えたのを思い出す。短い期間ですぐにやめている。それでよかったと思います。最近あまりいないのだけど、作詞に専念している人に一度書いてもらうといいのでは?と思います。
Jill-Decoy association Official Youtube

2017年3月20日

たかが世界の終わり

たかが世界の終わりネタバレ含みます。

グザヴィエ・ドランの「マミー/Mommy」以来のオリジナル映画。原作は戯曲で、12年ぶりに家に帰った次男の帰省の1日の出来事を描く。カナダ=フランスの映画で、ロケ地はどこかわからないけれど、舞台はフランスの田舎のように見える。ベルトラン・タヴェルニエの「田舎の日曜日」を思い出したが、あんなのんびりした映画ではないし、ストーリーも全く違うけれど、映像にはどこか共通点が感じられる。フランス映画の伝統なのか。家族の映画はどこか似る。

舞台はほぼ家の中だけの密室における会話劇なのに最後まで緊張感に満ちていて、飽きさせない。なんだろうこの力は。アップの多用、一人アップになると、別の人物は背景に消える。いつものように音楽が効果的に使われる。今回は「恋のマイアヒ」で驚かされたけれど。


彼は何をしに帰って来たか。兄嫁は気づいていて、直接質問を口にもする。でもその答えは自分の夫や姑に言って欲しい。母も何かを感づいていて、でも言って欲しくないので話をそらす。妹は小さい頃にいなくなった兄に憧れている一方、残されたことへの恨みもある。だが、何のために帰って来たかはわかっていない。最も乱暴に告白を恐れているのが兄。もともと優秀な弟へのコンプレックスに満ちあふれていて、憎んでもいる。かまをかけるためなのか、弟の昔の恋人が癌で死んだことを告げている。告白しようとした弟を乱暴に止める。これが最後だとわかったとしても、おそらく受け入れられない。最初、告白することで「僕は最後まで僕でありたい」みたいなことを言ってるが、そんな簡単にいくわけがない。

ドランの映画にさわやかなハッピーエンドなんて望めない。でも後味が悪いとも思わない。悲劇的な結末を「あぁ、そうだよね。そんなもんだよね。」と説得力とあきらめをもって受け入れられるのは、彼の映画の力なんだろうなと思う。

ギャスパー・ウリエルのはにかんだ顔と割れたあごが忘れられない。


公式サイト:たかが世界の終わり
監督・脚本:グザヴィエ・ドラン
主演:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、ナタリー・バイ
原題:Juste la fin du monde
2016年 カナダ・フランス カラー 99分

「マミー/Mommy」